2007.08.13 Endless Summer 9th
「雨…止んだね」
「ん?…あぁ、ほんとだ」
美雨は琉司と一緒に、蓉香の見舞いへ向かうところだった。
あれからよく2人は一緒に行動するようになった。
何か秘密を共有するような、危うい均衡を保っている。
いつも見舞いには出向くのだが、どうしても部屋へ入ることが出来ない。
どうしようもなく、怖いのだ。
彼女のあの瞳がまた冷たい光を宿していたらと考えると、どうしようもなく。
「………、…美雨、大丈夫か?」
「え?………あ、ごめん…大丈夫」
「気分悪いなら今日はもうやめるか?」
「ううん、大丈夫…ほんとに」
「……怖いのか」
「怖い、よ…だって……」
ずっと一緒にいた人が、急に遠くに行ってしまうのだから。
距離が遠い訳ではない。
現実的には今も側にいる。
こうして少し歩けばすぐに会える。
ただ、気持ちが離れてしまった。
彼女が「忘れた」と言ったことは、嘘なのではないかと思う。
…………否、そうであって欲しいと願っているのだ。
彼女と過ごした時間が、確かに在ったことを証明したい。
「忘れてしまうのは、知らないことと同じだよね」
「……」
「そこに在ったって確証は、どこにもないの。結局は、記憶も曖昧なも
のだもんね」
「…そんなこと、言うな。お前が覚えていればいいだろ」
「……琉司」
「大体、そんな心配しなくたって……俺がちゃんと覚えてるよ」
この夏も、今までの日々も。
「………今日は、面会されますか?」
「…………」
『俺がちゃんと覚えてるよ』
その言葉は、何よりも今の彼女にとっては心強かった。
誰かが覚えていてくれる。
誰かが確証を、与えてくれることの安心感。
「…………あの…?」
「……はい、今日は面会、お願いします」
病室の冷たいドアの前。
取っ手に手を掛けて、それを引くのには恐ろしい気力がいるらしい。
たったそれだけの動作なのに、手が震える。
(お願い蓉香―…)
遠くに、行かないで。
祈るような気持ち。
彼女の震えている手に、蓉香のそれよりも大きい掌が重ねられる。
「琉…」
「………大丈夫だ」
「………うん」
大丈夫。
彼女と過ごした日々は嘘などではない。
美雨が、ドアを開けた。
+++遺書+++
おそーくなりました。9thです。
今回は美雨視点。
……自分で書いておきながら、この小説書くのものすごい難しいんですけど……)オイオイ
2007.07.08 Endless Summer 8th
空が泣いていた。
上手く泣けなくなってしまった蓉香の代わりに、とでも言いたげな空模様。
記憶よりも、泣き方を先に忘れたんだろうか、と1人嘲笑にも似た笑いをもらす。
その時、コンコンという乾いたノック音。
「………はい」
「……俺。」
……詩樹の声。
蓉香の瞳が、凍り付いた。
鼓動が酷く五月蠅い。上手く声が出せなかった。
「……」
「ん。……入るぜ?」
「え……」
蓉香の答えを待たずに、詩樹が少し乱暴に扉を開けた。
彼はずぶ濡れで、長めの茶髪が雫を滴らせていた。
蓉香に向けられた瞳は、普段のおどけた光を一切映していない。
「……具合は?」
「……大、丈夫……だけど」
「お前さ、嘘ついたろ?」
「…何の、こと「この前だよ。嘘ついて、俺たちを突き放したんだろ?」
「あたしは貴方のことなんてもうわかんないって言って」
ガン、と詩樹が壁に手をつく。
視界が狭まって、詩樹しか見えなくなる。
冷たい瞳がこちらを真っ直ぐに見ている。
「とぼけんな。忘れてんだったらどうして俺を避ける?」
「……っ」
「俺たちを突き放して、自分だけ痛いの我慢して…みんな抱え込んでみんな忘れて、それで終わりだと思ってんのか…!?」
「あたし、は…」
「馬鹿なこと言ってんじゃねぇよ!!その程度の存在なのかよ!!」
詩樹の拳が、蓉香の顔の横で震えている。
瞳は前髪に隠れて見えない。
見えないが、きっと痛みと怒りで揺れているんだろう。
「なんで……どうしてよ!!あたしはどうせ忘れるんだから!!我慢してれば…っ、みんな……っ!!諦めてよ!!!あたしだけ忘れて、みんなが痛い思いするのはいやなの!!」
「蓉香……」
「お願い……諦めてよ…………」
涙を流しながら、詩樹の胸板を叩く。
いつか忘れてしまうなら、今いくら傷ついたって構わない。
そう、思ったのだ。
「そんなこと出来るかよ!!俺は……っ」
ふっと力が抜かれて、そのまま抱き込まれる。
「忘れ、させねぇ。他のどんなこと忘れても、俺たちのこと忘れるなんて許さねぇ!!」
「……なんでよ…これ以上、想い出はいらないの……っっ」
美しいはずの想い出。
今の彼女にはただの重い枷にしかならなかった。
「それでも俺は……」
詩樹は呻くように言った。
「俺は、諦めねぇ」
いつか、みんな消えゆくとしても。
口にしなくても、共有する体温がその気持ちを伝えていた。
泣いていたのだ。
本当はずっと。
雨が、止んだ。
+++遺書+++
遅くなりましたー8thです。
うぅ……書いてて可哀相だ……)お前が言うな馬鹿
上手く泣けなくなってしまった蓉香の代わりに、とでも言いたげな空模様。
記憶よりも、泣き方を先に忘れたんだろうか、と1人嘲笑にも似た笑いをもらす。
その時、コンコンという乾いたノック音。
「………はい」
「……俺。」
……詩樹の声。
蓉香の瞳が、凍り付いた。
鼓動が酷く五月蠅い。上手く声が出せなかった。
「……」
「ん。……入るぜ?」
「え……」
蓉香の答えを待たずに、詩樹が少し乱暴に扉を開けた。
彼はずぶ濡れで、長めの茶髪が雫を滴らせていた。
蓉香に向けられた瞳は、普段のおどけた光を一切映していない。
「……具合は?」
「……大、丈夫……だけど」
「お前さ、嘘ついたろ?」
「…何の、こと「この前だよ。嘘ついて、俺たちを突き放したんだろ?」
「あたしは貴方のことなんてもうわかんないって言って」
ガン、と詩樹が壁に手をつく。
視界が狭まって、詩樹しか見えなくなる。
冷たい瞳がこちらを真っ直ぐに見ている。
「とぼけんな。忘れてんだったらどうして俺を避ける?」
「……っ」
「俺たちを突き放して、自分だけ痛いの我慢して…みんな抱え込んでみんな忘れて、それで終わりだと思ってんのか…!?」
「あたし、は…」
「馬鹿なこと言ってんじゃねぇよ!!その程度の存在なのかよ!!」
詩樹の拳が、蓉香の顔の横で震えている。
瞳は前髪に隠れて見えない。
見えないが、きっと痛みと怒りで揺れているんだろう。
「なんで……どうしてよ!!あたしはどうせ忘れるんだから!!我慢してれば…っ、みんな……っ!!諦めてよ!!!あたしだけ忘れて、みんなが痛い思いするのはいやなの!!」
「蓉香……」
「お願い……諦めてよ…………」
涙を流しながら、詩樹の胸板を叩く。
いつか忘れてしまうなら、今いくら傷ついたって構わない。
そう、思ったのだ。
「そんなこと出来るかよ!!俺は……っ」
ふっと力が抜かれて、そのまま抱き込まれる。
「忘れ、させねぇ。他のどんなこと忘れても、俺たちのこと忘れるなんて許さねぇ!!」
「……なんでよ…これ以上、想い出はいらないの……っっ」
美しいはずの想い出。
今の彼女にはただの重い枷にしかならなかった。
「それでも俺は……」
詩樹は呻くように言った。
「俺は、諦めねぇ」
いつか、みんな消えゆくとしても。
口にしなくても、共有する体温がその気持ちを伝えていた。
泣いていたのだ。
本当はずっと。
雨が、止んだ。
+++遺書+++
遅くなりましたー8thです。
うぅ……書いてて可哀相だ……)お前が言うな馬鹿
2007.06.10 Endless Summer 7th
時が停まった。
無機質とも言える蓉香の言葉が、他の三人の心臓を叩いて衝撃を与える。
「え…蓉香…忘れちゃった…の……?」
「嘘だろ……オイ…」
「さぁ…?でも忘れたのかどうかも分からないわ…だって覚えてないんだから……だけど…」
一瞬、蓉香が逡巡する。
そして、真っ直ぐに臆しない視線をこちらへ寄越した。
「忘れてしまったのなら、その程度の存在だったんじゃない?……だから、あなた達も忘れてしまっていいから」
その言葉は困ったような笑みで締めくくられたのに、酷く冷酷に響いた。
「……………」
詩樹は1人部屋を出ていった。
その表情は、長い前髪に隠れて見えない。
「いや………っ、そんなの嫌……っっ!!」
「おい美雨っ、ちょっと待て!!!」
飛び出して行った美雨を追って、琉司も病室を飛び出していく。
遠ざかっていく足音を聞きながら、1人取り残された蓉香は一瞬だけ瞳を曇らせる。
「失くして………しまうの?」
幾度問いかけたことだろう。
けれども宙に問いかけたところで得られるのは虚しさだけ。
答えなんて、いつだって知るのは遅すぎて。
それはもう後悔の材料にしかならない。
固く握りしめた手は、シーツよりも白かった。
ドアの向こうで、この呟きを静かに聞いていた者がいたのを、蓉香は知らない。
「嘘だよ………!!蓉香の中から…あたし達が消えちゃうなんて…!!」
「美雨落ち着け……っ」
「だって……、だって……嫌…嫌なの……」
今まで過ごしてきた日々が、今を築きあげていて。
それが分かっているから心に突き刺さる事実は痛みを増す。
一緒にいたから、今の自分が在る。
「蓉香は……っ!あたしを、助けてくれたんだよ…?」
――あたしは、蓉香を助けられない。
琉司は耐えきれずに美雨の細い肩を抱きしめた。
「あいつが忘れちまっても…!俺らが…覚えててやるんだ……っ」
失くしたくないから、尚更に。ひたすらに。
「このままじゃ…俺、お前まで……美雨まで失くしちまう……っ」
「…琉「お前まで……いなくならないでくれ……っ」
こんな言葉が、彼女を救えるとは思えない。
でも――それがたとえ、エゴだったとしても――言わずにはいられなかった。
「琉司……」
――あたしじゃ、蓉香の代わりはできないよ……
彼の心の中にいるのはきっと、蓉香だ。
その空白を埋めるのが自分なのだろうか。
喜ぶには哀しすぎた。
――それでも。
呻くような彼の声が、心を深く抉った。
美雨は心のその傷を覆い隠すように、彼の背中を抱き返した。
+++遺書+++
藤咲が思ってたよりずっと切ないんですけど。笑
遅くなりましたー7thです。
呼んでる人が泣いちゃうくらい切ないお話し目指してます。
泣いた方、ご一報を笑
無機質とも言える蓉香の言葉が、他の三人の心臓を叩いて衝撃を与える。
「え…蓉香…忘れちゃった…の……?」
「嘘だろ……オイ…」
「さぁ…?でも忘れたのかどうかも分からないわ…だって覚えてないんだから……だけど…」
一瞬、蓉香が逡巡する。
そして、真っ直ぐに臆しない視線をこちらへ寄越した。
「忘れてしまったのなら、その程度の存在だったんじゃない?……だから、あなた達も忘れてしまっていいから」
その言葉は困ったような笑みで締めくくられたのに、酷く冷酷に響いた。
「……………」
詩樹は1人部屋を出ていった。
その表情は、長い前髪に隠れて見えない。
「いや………っ、そんなの嫌……っっ!!」
「おい美雨っ、ちょっと待て!!!」
飛び出して行った美雨を追って、琉司も病室を飛び出していく。
遠ざかっていく足音を聞きながら、1人取り残された蓉香は一瞬だけ瞳を曇らせる。
「失くして………しまうの?」
幾度問いかけたことだろう。
けれども宙に問いかけたところで得られるのは虚しさだけ。
答えなんて、いつだって知るのは遅すぎて。
それはもう後悔の材料にしかならない。
固く握りしめた手は、シーツよりも白かった。
ドアの向こうで、この呟きを静かに聞いていた者がいたのを、蓉香は知らない。
「嘘だよ………!!蓉香の中から…あたし達が消えちゃうなんて…!!」
「美雨落ち着け……っ」
「だって……、だって……嫌…嫌なの……」
今まで過ごしてきた日々が、今を築きあげていて。
それが分かっているから心に突き刺さる事実は痛みを増す。
一緒にいたから、今の自分が在る。
「蓉香は……っ!あたしを、助けてくれたんだよ…?」
――あたしは、蓉香を助けられない。
琉司は耐えきれずに美雨の細い肩を抱きしめた。
「あいつが忘れちまっても…!俺らが…覚えててやるんだ……っ」
失くしたくないから、尚更に。ひたすらに。
「このままじゃ…俺、お前まで……美雨まで失くしちまう……っ」
「…琉「お前まで……いなくならないでくれ……っ」
こんな言葉が、彼女を救えるとは思えない。
でも――それがたとえ、エゴだったとしても――言わずにはいられなかった。
「琉司……」
――あたしじゃ、蓉香の代わりはできないよ……
彼の心の中にいるのはきっと、蓉香だ。
その空白を埋めるのが自分なのだろうか。
喜ぶには哀しすぎた。
――それでも。
呻くような彼の声が、心を深く抉った。
美雨は心のその傷を覆い隠すように、彼の背中を抱き返した。
+++遺書+++
藤咲が思ってたよりずっと切ないんですけど。笑
遅くなりましたー7thです。
呼んでる人が泣いちゃうくらい切ないお話し目指してます。
泣いた方、ご一報を笑
2007.04.06 Endless Summer 6th
蝉の鳴き声が、酷く頭に響いた。
夏はこんなにも騒がしい季節だったろうか、といつにも増して蒼い空を見上げた。
隣を歩く琉司も暑そうにYシャツを扇いでいる。
好きな人の気持ちが読めなくて、それを蓉香に疑ってしまう自分が醜く思えた。
人のことを疑うのは、ここまで心苦しいものなのか。
頭から必死に振り払っても湧いてくる気持ち。
(要は…嫉妬?)
妙に冷静に、その感情の名前を認識した。
そんな自己嫌悪の溝にはまりこんでいると、隣の琉司がふと声をあげた。
「やべ、美雨。夕立。」
「うそっ」
はたと気づいて地面を見れば、黒い染みがぽつりぽつり増えていく。
それはあっという間に大地を覆って、2人は木陰に走った。
「俺傘持ってない。」
「あ、あたしも…雨宿り、してこっか。」
「ん。」
なんとなく、気まずい空気。
それを破ったのは琉司だった。
「美雨、さ。」
「なっ何?」
「なんで俺のことだけ『秋津君』って呼ぶんだ?」
「え」
そんなの、決まってる。
決まってるんだけど、言えなかった。
「なんと、なく?」
「……特に意味ないなら、名前で呼んで欲しいんだけど。」
「え……」
「いや、ほら…俺だけってのも、なんか疎外感。」
瞳は逸らされて、どんな顔をしているのかは分からない。
でも……
「りゅ、琉……司、で…いいの?」
「………おう。」
嬉しくて、何か彼に伝えたくなった。
「あたし……「よっ、ご両人っ。何やってんのずぶぬれで。」
ひょいと顔を出したのは詩樹。
いつもこんなタイミングだ。
「ひゃあっっ!!?」
「おまっ、詩樹!いきなり出てくんじゃねぇよ!!」
「あらー、ごめん、俺邪魔した?」
「してねェよ馬鹿!!!」
喧嘩していたとは思えない程元気良く言い合う2人を見ながら、美雨は心臓の鼓動が治まるを待っていた。
(あたし……今、なんて言おうとした……?)
頬の火照りを、早く雨が冷やすことを祈った。
「……美雨ー?お見舞い行くんだろ?ちょっと狭いけどこの傘に入っていこうぜ。」
「あ…うんっ」
「あれれれ〜、もしかしなくても2人っきりのがいい?」
「詩樹、テメェは死んでろ。」
「せいとかいちょー恐っっ」
美雨はその「普段通り」のやりとりにくすりと笑った。
「……詩樹。」
「何?」
「この前、ごめん。俺言い過ぎた。」
「やー、俺こそ酷いこと言ったし。チャラで。」
(こんな風に、あたしの中の気持ちもさらっと流せたらいいのに―……)
また、心がちくりと痛む。
ずっと抱えてきた、この痛み。
誰にも言うことはできなくて、今まで蓉香にどれだけ助けてもらってきたのかを身に染みて感じた。
…こんなことで、感じたくはなかったのだが。
「うぇー、結局ずぶ濡れじゃん。」
「美雨風邪引く。大丈夫か?」
「あ、平気……ありがと。」
ほれ、と琉司は大きめのスポーツタオルを投げた。
「使っていいから。」
「ありがと………」
病院で不謹慎な程、顔がにやけてしまう。
自分を叱咤して蓉香の病室を探す。
検査入院は明後日まで。
まだいるはずだ。
「あ、ここだ。………蓉香?俺。」
そっとドアを詩樹が開ける。
続いて2人も入った。
真っ白な病室に、1人だけで蓉香はいた。
少し痩せただろうか。
「久しぶり。調子はどう?」
返答がない。
「………蓉香?」
詩樹が怪訝そうに身を屈めて問いかける。
そして、その次に彼女の口から紡がれた言葉に3人は愕然とする。
「あなたたち、誰?」
時が、停まった。
+++遺書+++
遅くなりました〜;
6thです。
此処でまたひとつ山場です。
2007.03.30 Endless Summer 5th
美雨は流れる雲を見上げながら、じりじり照りつける太陽の下を歩いていた。
今年もやっぱり訪れる夏。
いつもなら期待が胸を満たしているのに、今年はこの天気とは裏腹に重たい雲が心に翳りを落としている。
「……今日は、お見舞い行こう。」
ぽつりと呟いてみても、誰も答えてはくれない。
ただ、口に出してみなければ決意は揺らぎそうで。
あれから琉司と詩樹には会っていない。
なんとなく、3人の間に亀裂が入っていた。
けれどその亀裂を埋めるような行為が敢行できるほど勇気はなかった。
(蓉香なら、カンタンにしてくれそう。)
こんな他力本願だから、大切な友達にも心労をかけてしまうのだと自分を叱りつける。
……でも、本当は誰かに叱って欲しい自分がいた。
「……美雨?」
「?」
呼ばれて振り向くと、そこには暑さからか珍しく制服を崩した琉司。
後ろから走ってくる。
美雨の心臓が、ときめきと不安に小さく悲鳴をあげる。
「見舞い?」
「う、うん……」
「俺も行っていいか?」
「え、あ、うんっ……蓉香、最近症状が出てきたみたい。」
「え?」
努めて冷静に、でも内心彼の顔色を窺いながらゆっくり言う。
夏の太陽は、2人の会話を鈍らせた。
「少しずつ、昔のアルバムのこととか思い出せなくなってるみたい。……予想よりも、進行が早いって先生が。」
「……そ、か。」
琉司は別段狼狽える訳でもなく、汗で貼り付く前髪をうっとおしそうに掻き上げた。
そして、小さく溜め息。
「俺さ、詩樹と喧嘩した。」
「……そう。」
知っていたが、あからさまに驚くのもどうかと思う。
だから小さく返事だけ返した。
「もしかして美雨、聞いてた?」
「え?ま、まさかそんなわけ……」
「あ、うん…ならいいけど。」
ならいいって、どういう意味?
そんな言葉が喉まで出かかったけれど、やっぱり問うことなんて出来ない。
(蓉香が好きなんじゃないの?それを隠してるの?それとも――)
ぐるぐると思考が回り、こんな時まで自分のことを考えている自分を少し嫌悪した。
「あいつ、全然顔出さねぇし。ホント何考えてんだか。」
「詩樹には詩樹で、なんか在るんだと思うよ?」
「まぁな。でも俺たちに一番出来ることってさ……」
2人の歩みが、止まる。
蝉の鳴き声も止まって、世界が停まってしまったかのような錯覚に囚われる。
今自分に一番出来うること。
そしてそれは、今一番欲しかった答え。
「………今までと同じ夏を、過ごすことじゃないかな。」
今までと同じ。
それが出来るんだろうか。
出来なかったら、その事実に彼女は壊れてしまうんじゃないか。
不安ばかりが心を塞ぐ。
「俺だって、…きっと詩樹だって、恐いさ。でも――」
一番不安なのは、蓉香だから。
大切な友達に、してやれること。
「蓉香はあいつの一番の友達だから、一緒にいてやろうぜ。」
「…………うん、そうだね。」
気持ちが少し軽くなった。
でもそれと同時に少し痛んだ。
美雨は笑顔を浮かべて、その痛みを――彼の、蓉香を想っているかのような言葉を――掻き消した。
+++遺書+++
はい、一発書きなんで酷いです。汗
でもでも、そこそこの出来映えだと言ってやってください!!汗
最近風景の描写するのにハマってます。
shinobiカウンター 










